犬の特性に合わせた8つのグループ分け

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犬のグループ分けについて

トイ・グループ
トイ・グループは日本でもっとも人気がある犬種群で全体の60%弱を占めています。これは日本民族が農耕を主体とした生活をしてきたため、犬とのかかわりが少なかったことと関連します。欧米のように狩猟・牧畜に依存してきた民族を先祖にもつ人々と違って、犬を多面的に活用してこなかった私たちには、犬を上手にコントロールする知識が不十分でした。

日本人が愛犬趣味を自分のものとするようになったのは、1930年代でした。しかも、それはごく限られた人たちだけで、間もなく第2次大戦が始まったため、愛犬趣味は不適当なものとして遠ざけられ、本格的に普及しはじめたのは1960年代降です。

それまで犬となじみがなかった人が飼うとなれば、コントロールがむずかしい中・大型犬を敬遠し小型犬や愛玩犬にとびついたのは当然のことといえましょう。こうして日本ではトイ・グループに属する犬が増えたのです。

そして飼い方にも革命的な変化がみられるようになりました。それはそのころから日本の家屋が畳、障子、からかみが少ない洋風のものになったということです。そこで安心して室内で犬を飼うようになり、のちにはこの風潮が中・大型犬にもおよぶようになって欧米なみの飼育スタイルが定着するキッカケとなりました。

犬は外、人は内では、犬を正しく理解することは不可能です。そういう意味からもトイ・グループに属する犬がもてはやされたことを高く評価すべきではないでしょうか。欧米は中・大型犬7割、小型犬・愛玩犬3割となっており、それを引き合いに出して日本人の犬の飼育傾向を幼児っぽいと批判される人もいますが、これはあさはかな見方だと思います。

犬との共存の歴史をもたず、また住宅が狭く、庭も狭いことを無視し、日本と欧米を比較するのはいかがなものでしょうか。長い目で見守ってほしいというのが実感です。 なお、トイ・グループのなかにはテリアを名乗っている犬が何種類かいますが、これはテリアを基礎に作出されたものの、テリア・キャラクターを排除し、トイ・テリアをめざした結果、性格的に愛玩犬化したことによります。

スピッツグループ
スピッツとは、ドイツ語で尖ったものとか鋭いものを意味します。これを犬にあてはめると、立ち耳、長い口吻(マズル)、ややうるさい鳴き声ということでしょうか。これらの特徴をそなえた犬をドイツではスピッツと呼び、多くの国もこの呼び方を受け入れています。

スピッツ・タイプの犬は、ドイツよりもむしろ北極をとりまく地域で多くみられます。スカンジナピア半島、シベリア、アラスカ、カナダ北部、グリーンランドなどで、寒さが厳しく雪が多いこれらの地方では、交通手段として犬ゾリが欠かせません。その主役がスピッツ・タイプの犬だったのです。もちろんソリを引くだけでなく、獣や魚などの猟も得意ですし、番犬の役目も果たしてきました。

厳しい自然環境のなかで生きぬく生命力をもっていることは、南極大陸に置き去りにされながら生きていた「タロ、ジロ」の例でも明らかです。それだけに性格的に多少粗野な点がみられる犬もいることを知っておく必要があります。

このグループのなかに、なじみの深い立ち耳、巻き尾の日本犬が含まれていますが、だからといって日本犬がスピッツというわけではありません。

日本の展覧会制度では、以前日本原産犬種だけでジャパニーズ・ブリードとしてひとつのグループを構成していました。そして日本犬の振興を図り、輸出を促進してきました。しかし諸外国では、犬を作業目的やタイプで分類することはあっても、原産国で分類する方程をとっていません。

いまのような国際化した時代には、日本式の分類は不適当で、1992年3月をもって「ジャパニーズ・ブリード」は廃止されました。 そして諸外国と同じように作業目的やタイプで分類する方法を採用した結果、立ち耳、長い口吻ということでスピッツ・グループに属することになったのです。また欧米では、古くから日本犬をスピッツ・タイプとみなしてきましたし、特に北欧諸国では以前からスピッツ・グループを採用し、日本犬もここへ入れてきました。したがって前例がないわけではありません。

ワーキング・グループ
昔は猟犬をのぞくすべての労働に従事する犬がここに所属していましたが、その後、牧羊・牧畜犬がハーディング・グループとして独立したり、ソリ犬タイプの種類がスピッツ・グループとして独立したため、現在は番犬と闘犬タイプの犬のグループとなっています。

ワーキング・グループに属する犬に共通した特徴は、なんといっても大型犬が多いことです。犬を大きさで単純に分類するのは無謀とは思いますが、大型犬、中型犬、小型犬、超小型犬に分類しています。 雄を対象に体高63cm以上を大型犬、それ以下41cmまでを中型犬、それ以下25cmまでを小型犬、24cm以下を超小型犬としました。

ワーキング・グループに属する犬の多くは大型犬です。 ワーキング・グループの犬は、からだばかりでなく頭部も大きいのが特徴です。それだけに口が大きく顎が丈夫でみるからに迫力を感じさせます。この犬たちの先祖は、それを武器に古代には戦闘に用いられたり、他の動物との闘犬に供されてきました。したがって古代や中世では、犬というより野獣と思われていたこともあります。

やがて時代が進むにつれて番犬や警察犬として飼育されるようになり、性格面でも改良が加えられ、一般家庭でも飼育されるようになりました。しかし、婦人や子供だけでの散歩は無理ですし、最初の訓練が肝心なことはいうまでもありません。

ただし、歴史が浅いボクサー、ドーベルマン、土佐犬などは別の経過をたどっています。また、グレート・ピレニーズ、パーニーズ・マウンテン・ドッグは牧場の番犬、セント・バーナードは修道院のシンボルとして飼われた歴史をもっています。 断耳(ボクサー、ドーベルマン、グレート・デーン、ナポリタン・マスティフ)や断尾(ボクサー、ドーベルマン、ロット・ワイラー)をする犬も多く、動物愛護の高まりのなかで将来性が案じられています。

ハーデイング・グループ
ハーデイング・グループとは、牧羊・牧畜犬群のことです。このタイプの犬の歴史はかなり古いと考えられています。

羊が家畜化されたのは8000年前といわれ、牧羊犬もこのころ誕生したものと思われます。オオカミが集団で獲物を狩るのをみて、羊を家畜とすることを思いついたとされています。 犬は忠実で勇敢だったし、なによりも夜行性の動物だったことが牧羊業を可能としました。羊の家畜化で自信をえて馬・牛などを次々に家畜としました(羊より馬の家畜化が古いともいわれます)。いずれにしても牧羊・牧畜犬が必要だったことでしょう。

2500年前に成立したとされる『イソップ寓話集』には、いく度となく牧羊犬が登場します。羊の家畜化はメソポタミア地方で始まったといわれ、イソップが生きていたころは、ギリシアでも一般的なものとなっていました。

牧羊業を国の主幹産業として力をいれたのは、イギリスです。イギリスには6000年前に牧羊業が伝えられたといわれており、森林を切り拓いて牧場とし、1000年前には名の知られた羊毛の産地となっていました。その後さらに羊毛の生産に励んだため、対岸のヨーロッパ大陸の同業者のあつれきが生じ、1337年から1453年までの長い期間イギリスとフランス間で断続的におこなわれた1OO年戦争の原因のひとつとなったほどです。この戦争で勝利をおさめたイギリスは、大陸への羊毛輸出にさらに力を入れたことから経済的に発展をして、やがて産業革命に結びつきます。

この過程でイギリスでは多くの牧羊犬が誕生しましたが、反両大陸では滅んだ犬種も少なからずありました。19世紀にいたり牧羊・牧畜業の中心がオーストラリアに移ると、イギリスでも淘汰がおこなわれるようになります。現存しているのは、独特なタイプと美しい体型をしたものだけといえるでしょう。 残念ながら日本では牧羊・牧蓄犬が誕生しませんでした。これは日本に大きな影響を与えつづけてきた中国では、周辺部を除き牧羊・牧蓄業がおこなわれなかったからです。 このため、日本人は犬をコントロールする技術を身につけることが遅れたのです。

ガンドッグ・グループ
鳥猟専門に使用される犬のグループのことで、ハンターの友です。現在はシューテイング(銃猟)向きの犬となっていますが、古代では網で鳥をとる猟であり、それに使用された犬の子孫といわれる犬もいます。

網を張った方向へ鳥を飛びたたせるように訓練された犬を、鳥のいるブッシュ(草むら) におどりこませるのが古代の猟法で、やがて鉄砲が発明され散弾銃が普及するにつれてガンドッグに対する訓練も変わりました。 また、用途も広がりました。

特にイギリスでは産業革命以後登場したブルジョワ階級、それにつづく中産階級がシューティングを愛好したことで、狩猟人口が爆発的に増加し、これによってガンドッグの種類が増え、犬のしぐさも洗練されたものになりました。たとえば18世紀ごろまでは、獲物の在りかをポイン卜(教える)するポインターの前脚のかかえこみは中途半端でしたが、19世紀になるとしっかりとかかえこむようになります。 ガンドッグ・グループに属する鳥猟犬は大別すると、4種類に分類されます。

①セター
②ポインター
③スパニエル
④レトリーバー
で、セターとポインターはおもに鳥の在りかを教えることと獲物の回収、スパニエルもほぼ同じ役目をしますが、ブッシュからの回収が得意です。レトリーバーは回収専門で、それも水面に撃ち落とされた獲物に対して能力を発揮します。

カンドッグの特徴は、ハンターの命令をよく聞きわけることです。多くの場合鳥猟は、ブッシュや水面から飛びたったところを狙います。それまでは、鳥にさとられないようにさし足しのび足で近づきます。ころあいをみてハンターが命令をくだし、犬は鳥を飛びたたせます。したがって、はしゃぎすぎたり自分勝手な行動をするようでは、ガンドッグとしては失格です。 そういうことから、ガンドッグは聞きわけのいい、温和な性格の犬が多く、レトリーパー種のように盲導犬として新しい用途を与えられた犬も出現したのです。

ハウンド・グループ
ハウンドとは、獣狩りに用いる猟犬の総称です。これは犬の原点であり、そんなことからハウンドをもたない民族は存在しなかったと考えています。

私たちの遠い先祖は、石器時代前から地球上の各地に散らばって狩猟・採集生活をおこなっていました。まだ、定住生活も農業も知らず、食料となるものを求めてひたすら走り回っていたころ、私たちの祖先は非常に心強い仲間をえることになります。それが犬でした。ハウンドといったほうがいいでしょう。

犬は肉食動物で本来なら私たちの先祖と獲物を奪いあう関係にありました。それがいつのころからか協力しあうようになったのです。 人間のキャンプ(野営地)の回りにいると餌のおこぼれにありつけたことが始まりだといわれています。

犬はそのお返しに人間や犬を狙う野獣の接近を、得意とする嗅覚や聴覚でいち早くキャッチし、危険信号を発信して人間を救いました。このようなもちつもたれつの関係をくり返しているうちに信頼関係が深まり、犬は人間のそばで生活をすることが許されるようになったのです。それはいまから1万5千年くらい前のことだったと考えられます。

やがて狩りに出向く人間につきそうようになり、犬は大きな戦力となりました。獲物の居所を鋭く感じとり、逃げても臭跡をたよりにどこまでも追いかけ成果をあげました。犬が協力するようになって生産性が向上し、人間は生活にゆとりができました。余裕の時間を狩猟の道具の改良にあてたり、家族との交流を深める時間にあて、やがて私たちの遠い祖先は文明に到達したのです。

犬を仲間に引き入れたことにより、人間ははかりしれない恩恵をうけ、この方式はいろいろな民族に伝えられました。こうしてそれぞれの民族が自前のハウンドをもつようになったのです。この犬の能力をさらに向上させるため、訓練に工夫をこらしたり繁殖に気を配ったと思われます。そしてそれぞれの自然環境にふさわしいハウンドとなり、多様化したことはいうまでもありません。 ハウンドには、視覚型の犬と嗅覚型の犬とがあり、視覚型の犬は脚が長くスピードのある走法で獲物にせまり、嗅覚型の犬は脚が短く臭跡をたよりに獲物にじっくりとせまります。

テリア・グループ
テリアとは、もともとイギリスで穴や土の中をおもな生活の場としている小害獣のネズミ、モグラ、ウサギなどを捕食してきた、中・小型のハウンドに与えられた名称です。 からだこそ小さいが、強い性格と機敏な行動力をもっていて、病気に強いのも特徴のひとつです。

これらの特性は、イギリスの厳しい自然環境に育くまれたもので、不順な気候や不整地のなかで生き抜くためには、欠くことのできない条件でした。 このテリアは、地方ごとで多少性格が違っているようで、例えばスコッチテリアとイングリッシュテリアは、スコットランド人とイングランド人ほど違っている。

スコッチテリアはしっかりもので強いが少しばかり陰気であり、イングリッシュテリアはなつきやすいが、スコッチテリアと同じくらい辛抱強い。アイルランド産のテリアは同共和国コーク州の若者と似ており、ちょっとした合図ですぐけんかをし、遊び好きでよく愛情を表現する。

イギリスになぜこれほど多くの種類のテリアがいるかといえば、ふたつのことが考えられます。ひとつはイギリスでは、ネズミを捕るのが犬の仕事だったということです。多くの国では、ネズミを捕るのはネコと決まっていますが、どういうわけかイギリスではそれを犬に期待しました。島国のため、ネコの渡来が遅かったのかもしれません。

ふたつめの理由は、他の地域のテリアに負けない、自分たちだけのテリアをもちたいという欲望でした。一種の郷土愛かもしれません。この結果、いろいろなタイプのテリアが作出されました。その種類は30種におよんでいます。

テリアはまた、長脚テリアと短脚テリアに分類することができます。長脚テリアは短脚テリアにくらべて大きく、キツネ狩りやカワウソ狩りにも用いられます。短脚テリアは小柄なので、容易に小害獣の巣穴にもぐりこむことができます。 このテリア・グループには、ヨーロッパ大陸の犬でテリア気質をもったものや、イギリス以外で作出されたテリアも含まれています。

コンパニオン・グループ
家庭犬群として知られています。イギリスの愛犬団体では昔はノン・スポーティングと呼び、日本やアメリカも同調していた時代がありました。

ノン・スポーティングとは非鳥獣犬の意味で、どんな猟にも使用されていない犬と位置づけられていました。それなら愛玩大かといえば、そうではなく、番犬と呼ぶにも多少抵抗がある、そんな感じの犬たちのグループとして認識されてきましたが、近年はコンパニオン・グループという、適切な名称が与えられたことは、この犬たちのために喜ばしいことです。

昔は闘犬だったブルドックや馬車が自動車の役を果たしていた時代の伴走犬ダルメシアン、テリアを名乗っていますがテリア・キャラクターに乏しいボストン・テリアやチベタン・テリアなども含まれ、他のグループと比較してやや統一を欠く感はまぬがれません。

それも当然で、他のどのグループにも分類しにくい犬をひとまとめにしたからです。だからといってそれはこのグループに属する犬の名作を損うものではありません。 もともと犬種群とは、展覧会のために便宜的に分けられたものだからです。昔の展覧会は、まずすべての犬種のナンバー1を決定し、次にその全部のナンバー1のなかから優勝犬を決めるというやり方でした。

出陳される種類が少ないうちは、それでもよかったのですが、100種類以上が参加するようになった1920年代となると、審査に要する時間が長くなり、収拾がつかなくなるようになりました。そこでその混乱を防止するため、準決勝ともいえるグループ戦が考えだされたのです。そのグループを特徴づけるため、鳥猟犬群、ハウンド群、テリア群、愛玩犬群など作業目的やタイプを重視しましたが、それらのどれにも分類しにくい犬がおり、そこで「ノン・スポーティング」、のちのコンパニオン・グループが作られたというわけです。 コンパニオン・グループに属する犬は、それぞれ個性に富んだ犬ばかりで、ぜひ観戦をされますようおすすめします。
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