犬の五感やからだのつくりは思った以上に変化に富んでいる

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犬の五感や体のつくり

獲物を追うために進化してきた犬の体
  犬に限らず、動物の体は長い進化の過程で形づくられてきたものです。したがってその体のヒミツを探るには、彼らの祖先がどんな進化の道を歩んできたのか、そしてその中でどんな暮らしをしてきたのかを知ることが非常に重要になってきます。ここで犬がたどってきた歴史を簡単に振り返ってみましょう。

犬はオオカミが家畜化されたものが祖先だと考えられています。オオカミを含むイヌ科の動物たちは、おもに草原を生活の場とし、群れを作って集団で狩りをして暮らしていました。

草原は森林内と違って見通しがよく、身を隠す場所が少ないので、獲物を捕まえるにはスピードが必要になります。そのため、イヌ料動物はスリムで足が長い、走るのに適した体型へと進化したのです。また、獲物のにおいをとらえる鋭い嗅覚、視野が広く、動くものには敏感に反応する視覚、獲物が発するかすかな音をも感知する聴覚など感覚器官も発達しました。

犬の祖先か人間とともに暮らし始めたのは1万年以上前。その後さまざまな用途に合わせて選択育種が行われ、今では340種以上の犬種かあります。犬種によって体の大きさも外形もさまざまですが、彼らの祖先が獲物を捕まえるために手に入れた優れた身体機能は、現在のすべての犬に受け継がれています。

骨格
走るのに適した体はクッション性もバツグン
犬の骨格には、狩りをして暮らしていた祖先から受け継いだ、さまざまな特徴を見ることができます。まずは体の軸となる脊柱。

頭蓋骨から尾の先まで続き、多数の椎骨で構成されていますが、椎骨の数を見ると、犬の体の比率は人間よりも胸が大きく、骨盤か小さく構成されていることがわかります。実はこれは走るのに適した構造なのです。また、椎骨と椎骨の間にはクッションの役割を果たす椎間円盤があり、とくに背中から腰にかけてはこのクッションの割合が多くなっています。犬の体が驚くほど柔軟で、体を丸めて寝ることができるのはこのためです。

一方、四肢の骨格でもっとも特徴的なのは足の部分。人間が足の底全体で体を支えているのに対し、犬は人間の指先にあたる部分だけで体を支えています。これも速く走るために生まれた変化だと考えられています。


人はストーリーで、犬は感情に関連して記憶する
犬は非常に頭のよい動物で、人間の2歳児程度の知能があるといわれています。脳の重さや形は異なりますが、基本構造はほぼ人間と同じ。本能や情動を司る大脳辺縁系にはほとんど違いがなく、犬もわたしたち人間と同じように喜怒哀楽や好悪の豊かな感情を持っています。

犬と人間で大きく異なるのは記憶のメカニズム。記憶や思考を司る大脳新皮質が発達している人間は、過去の出来事を一連の「ストーリー」として記憶できますが、犬は「感情」や「五感」と関連づけて記憶します。「スワレ」などのコマンドも、指示に従ったときにほめられたりごほうびをもらったことが「うれしい記憶」となって学習されるのです。また犬は人間のような複雑な思考回路が発達していないため、未来を予測したり、物事の善悪を判断することはできません。

ドッグフード しっぽ
もともとはバランスをとる役割があり、今ではコミュニケーションのひとつ
長い、短い、垂れ尾、巻き尾など、シッポは犬種によって長さも形もさまざま。 うれしいときはシッポを振り、おびえているときは足の間に挟むなど、シッポの位置や動きに犬の感情、意思が表れることはよく知られています。わたしたち人間にとって、シッポは犬の気持ちを理解するうえで重要な部分なのです。

また、犬の社会でもシッポは大切なコミュニケーションツール。あいさつや、支配・服従を示すときなど、犬たちは状況に応じてシッポによる会話をしています。慣習的に断尾をする犬種もありますが、こうした犬は相手に意思が伝わりづらくコミュニケーションに苦労することもあるようです。一方、シッポには体のバランスをとる役割もあります。走る、止まる、方向を変える、泳ぐなどさまざまな場面でシッポは舵の働きをしています。

皮膚・被毛
皮膚・被毛には外界から体を守る役割がたくさんあります
犬は、体のごく一部を除き、全身を被毛に覆われています。原産地の気候や作出の目的により多彩な被毛のタイプがありますが、その役割はほぼいっしょです。 さまざまな外的刺激や病原体などから皮膚を保護する、皮虜の乾燥を防ぐ、体温を維持するといった働きあるのです。

被毛は硬くまっすぐな保護毛(上毛)と細くやわらかなウェーブ状の緬毛(下毛)に分けられ、多くの犬種ではひとつの毛穴から1本の長い保護毛と数本の短い緬毛が生えています。このほかに触毛(ヒゲ)があり、これは感覚器の役割を果たしています。一般的に被毛は成長期、移行期、休止期の3つのサイクルで生え変わり、とくに冬毛/夏毛が切り替わる春と秋には大量の抜け毛が発生します。 皮膚と被毛の健康を保つためには飼い主による適切なお手入れが必要です。

視覚
獲物を捕らえるために視野、動体視力、夜間視力が発達
人間の基準で見ると、犬の視力は0.33程度だといわれます。しかし、犬は人間より視力が劣っているわけではありません。それぞれに得意分野があるのです。

犬が人間よりも優れている点は視野、動体視力、夜間視力。いずれも獲物を捕らえるために必要な能力です。まず犬の視野は人間より1.2~1.6倍広く、遠くのものまで見ることができます。とくに動いているものに対する反応が敏感で、900mの距離まで識別できるという報告も。

ボルゾイなどの視覚ハウンドは、この優れた動体視力を生かして獲物を見つける猟犬です。また、暗いところでものを見分ける夜間視力も人間の約3倍すぐれています。ちなみに犬は赤い色がほとんど見えませんが、青と緑は識別可能。犬が見ている世界は青、緑、およびその混合色だと考えられています。

聴覚
人の8倍の聴力を持つ犬、人の声はどう聞こえている?
獲物が発するかすかな音を逃さずとらえる。狩りには聴覚も非常に重要です。 犬は人間の約6倍の聴力を誇り、音をキャッチできる範囲も約4倍といわれています。聞きとれる周波数の範囲を比べると、人間の可聴周波数が16~2万ヘルツであるのに対し、犬は65~5万ヘルツ。

人間より2倍以上高い周波数の音をとらえることができるのです。この性質を利用したのが犬笛(約3万ヘルツ)です。 抜群の聴覚を持つ犬が人間の声を聞く際に反応するのは、声のピッチ(スピード)とトーン(高低)。これにより犬は人の気持ちを判断しているのです。また、子犬が遊ぶときの甲高い声に似ていることから、高く短い音に興奮する習性も。 ピコピコと高い音の鳴るおもちゃを好むのはこのためです。逆に、低いゆっくりとした声や音は、唸り声を連想させるため、犬の動きを止めてしまいます。

嗅覚
さまざまな情報をキャッチするもっとも重要な感覚
犬の五感の中でもっとも鋭く、もっとも重要な役割を果たしているのが嗅覚。 優れた嗅覚を生かし、犬は古くから人間の狩猟を手助けしてきました。現在でも警察犬、麻薬探知犬、災害救助犬など、さまざまな場で活躍しています。

犬の嗅覚は狩りの際に獲物のにおいを感知したり、外敵から身を守るために発達したもので、においによっては人間の1億倍も敏感です。鋭さの秘密は鼻腔にあります。においは鼻の奥にある嗅上皮の嗅細胞で感受されますが、嗅上皮の表面積は人間の約3平方cmに対し、犬は18~150平方cm。さらに嗅細胞の数も人聞か約500万個、犬は2億2000万個と格段に多いのです。このため、犬は人間に比べて嗅覚への依存度か高く、さまざまな情報をにおいで得ているほか、安心感や恐怖感などの感情もにおいに影響されるのです。

味覚
人間との暮らしで食性が変化
何でも食べるけど味オンチ
犬の祖先であるオオカミは基本的に肉食ですが、犬は何でも食べる雑食タイプ。 これは犬の祖先が人間と生活をともにし、その残飯などを食べるようになったことと関係していると考えられます。

犬か雑食性であることは味覚にも表れています。動物は舌の表面にある味蕾という器官で味を受容しますか、犬にもっとも多いのは砂糖に反応する味蕾。このため犬はお菓子などの甘いものが大好きなのです。ただし、味蕾の数は人間が9000であるのに対し、犬は1706と人間の約5分の1しかありません。

また、犬は甘味に加え、酸味、塩味もある程度感じられますが、苦味やうま味はほとんどわからないようです。このような意味で、犬は味オンチといえるでしょう。味覚より嗅覚が発達している犬は、味よりもにおいによって食べ物のおいしさを判断しているようです。

触覚
犬をなでることは犬にも人にもプラスに!
犬の触庄覚がとくに敏感なのは、鼻や口の周り。犬の口の周りや目の周囲、あご、ほおなどには普通の毛以外に硬くて長い触毛(ヒゲ)が生えています。その根元には感覚神経かとくに密に分布しており、感覚器として重要な役割を果たしています。ただ、敏感ゆえに犬は鼻や口の周りをさわられるのが苦手。このほかシッポや足先などもいやがります。

一方、耳の付け根、胸、背中などはなでられるのが大好き。飼い主にやさしくなでてもらうことは、犬にとっては母犬になめてもらうことと同じ意味を持ち、精神的な安定をもたらします。また、人間にとっても犬との触れ合いはメリットがあります。ストレスや不安の軽減、リラックス効果などが立証されており、病院や老人ホームなどで活躍するセラピードッグも登場しています。

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